英語学習は最強の脳トレ|認知症予防に効果的な理由を科学的に解説
英語学習が認知症予防に効果的な理由を科学的根拠とともに解説。バイリンガルは認知症発症が5年遅いという研究結果も。シニア世代が今日から始められる英語学習法を紹介します。
「英語を始めてから、頭がスッキリするようになった気がする」
大学時代、英語を教えるアルバイトをしていた時に出会った60代の方が、1年ほど経った頃にふと言った言葉です。
その方は最初、「海外旅行で困らない程度に話せるようになりたい」という目的で英語を始めました。認知症予防なんて、全く考えていなかったはずです。
でも、1年後。「最近、物忘れが減った気がする」「新聞を読むスピードが上がった」「頭の回転が良くなった感じがする」と言うのです。
当時の僕は「気のせいじゃないですか?」と半信半疑でした。
でも後から調べてみると、英語学習が認知症予防に効果的だという科学的根拠が、次々と見つかったのです。
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バイリンガルは認知症の発症が5年遅い
カナダ・トロントの研究で、驚くべき結果が出ています。
バイリンガル(2ヶ国語を話す人)は、1ヶ国語しか話さない人に比べて、アルツハイマー型認知症の症状の発現が5.1年遅い。
5年というのは、かなり大きな差です。
「でも、バイリンガルって子供の頃から2ヶ国語を話している人のことでしょ?今から始めても意味ないんじゃ……」
そう思うかもしれません。でも、研究はそうではないことを示しています。
高齢者でも効果あり
高齢者を対象とした研究では、第二言語を学ぶことで海馬(記憶や学習に関わる脳の部位)が成長することがわかっています。つまり、何歳から始めても、脳は変化するのです。
さらに、2つの言語を話す高齢者は、1つの言語しか話さない高齢者に比べて、脳の灰白質の体積が大きく、白質の状態も良いという研究結果もあります。
英語学習は、脳の構造そのものを変える可能性がある。これは、脳トレアプリでは得られない効果かもしれません。
なぜ英語学習が脳に良いのか?
では、なぜ英語学習が脳トレになるのでしょうか。
ポイントは、**「言語の切り替え」**にあります。
日本語と英語を行き来する時、脳は常に「今は日本語モード」「今は英語モード」と切り替えを行っています。この切り替え作業が、脳の前頭葉(計画や判断を司る部分)を鍛えるのです。
これは、単純なパズルゲームでは得られない刺激です。
英語学習が鍛える3つの脳機能
認知症予防に効果的とされる脳機能は、主に3つあります。
1. エピソード記憶 「昨日何を食べたか」のような、体験を思い出す力。英語で日記を書いたり、英会話で「週末何をしたか」を話すことで鍛えられます。
2. 注意分割機能 2つ以上のことを同時に処理する力。英語を聞きながら意味を理解し、返答を考える。この一連の流れが、まさに注意分割機能を使っています。
3. 計画力・思考力 「何をどう伝えるか」を考える力。英語で話す時、単語を選び、文法を組み立て、相手に伝わるように話す。この過程で計画力と思考力がフル稼働します。
英語学習は、この3つを同時に刺激します。だから、脳トレとして効果的なのです。
脳トレアプリだけでは「続かない」理由
「じゃあ、脳トレアプリでもいいんじゃないの?」
そう思うかもしれません。確かに、脳トレアプリも脳を刺激します。
でも、多くの人が3日で飽きてしまう。なぜでしょうか。
「使える」という実感がないからです。
脳トレアプリで高得点を取っても、日常生活で使う場面がない。だから「何のためにやっているんだろう」と感じて、続かなくなる。
一方、英語学習は違います。
- 海外旅行で使える
- 洋画を字幕なしで観られるようになる
- 孫と一緒に英語を学べる
- 外国人観光客に道を教えられる
「実際に使える」という目的があるから、続けられる。
脳トレとしての効果を得るには、継続が必要です。そして継続するには、楽しさと目的が必要。英語学習には、その両方があります。
シニアに合った英語学習法
ここで、シニア世代が英語学習を始める時に大事なポイントをお伝えします。
1. 完璧を目指さない
「ネイティブみたいに話したい」と思う必要はありません。
世界で英語を話す人の約8割は非ネイティブ。インド訛り、中国訛り、フランス訛り。みんな堂々と自分の英語を話しています。
通じればOK。それくらいの気持ちで始めましょう。
2. 毎日少しずつ
週末にまとめて2時間やるより、毎日10分を7日間続ける方が効果的です。
脳トレとしての効果を得るには、毎日少しずつ脳を刺激することが大事。これは筋トレと同じです。週1回の激しい運動より、毎日の軽い運動の方が体に良い。脳も同じです。
3. 恥ずかしくない環境を選ぶ
シニア世代に多いのが、「間違えたら恥ずかしい」という壁。
若い頃なら「失敗しても平気」で済んだかもしれない。でも、長年社会人をやってきた方ほど、「できない自分」を見せるのに抵抗があるのは当然です。
だからこそ、恥ずかしくない環境を選ぶことが大事。
最近はAI英会話という選択肢があります。人間ではなくAIが相手なので、間違えても誰にも見られない。何度でも同じフレーズを練習できる。
「恥ずかしさを克服しよう」と自分を追い込むより、恥ずかしくない場所で練習量を稼ぐ方が、よっぽど効率的です。
英語は「使える脳トレ」
まとめます。
英語学習が認知症予防に効果的な理由は、以下の3つです。
- 科学的根拠がある: バイリンガルは認知症発症が5年遅いという研究結果
- 脳の構造を変える: 海馬の成長、灰白質・白質の増加
- 続けられる: 「使える」という目的があるから、楽しく継続できる
脳トレアプリでは得られない、「使える脳トレ」。それが英語学習です。
冒頭で紹介した60代の方は、今でも英語学習を続けています。「英語を始めて、毎日が楽しくなった」と言っていました。
認知症予防になり、海外旅行も楽しくなり、毎日にハリが出る。
英語学習は、人生の後半戦を豊かにする最高の投資かもしれません。
参考文献
この記事は、以下の研究・情報を参考にしています。
- Delaying the onset of Alzheimer disease: Bilingualism as a form of cognitive reserve↗ - カナダ・トロントのBaycrest研究所による、バイリンガルがアルツハイマー型認知症の症状発現を5.1年遅らせるという研究
- Second Language Learning in Older Adults: Effects on Brain Structure and Predictors of Learning Success↗ - 高齢者の第二言語習得と脳構造の変化に関する研究
- The effect of lifelong bilingualism on regional grey and white matter volume↗ - バイリンガルの灰白質・白質に関する研究
- The effects of bilingualism on the white matter structure of the brain↗ - バイリンガリズムが脳の白質構造に与える影響(PNAS)